野菜炒め定食

本日20日(金)は、祝日のため午前11時から午後8時までの営業になります。
よろしくお願いいたします。



Squarepusher/『Iambic 9 Poetry 』

今日、お店で流していた音楽を聞いてくださったお客さま。タイトルを伝え忘れましたので、一応こちらに記しておきます。蓮沼執太『POPOOGA』(ポップオーガ)です。
それでは。



お店を閉めてから定食屋へ。のれんをくぐり、カウンターに。客は2人。席は10席ほど。テレビでは9時台お決まりの刑事モノ。解けそうになった謎がまた謎を呼ぶ中盤のクライマックス。野菜炒め定食550円。カウンターの中でおじさんとおばさん。いくつなのか、夫婦なのか、いまだにわからない。白髪まじりで、顔にも皺はあるのだけれど。このふたりはよくしゃべる。テレビが好きだ。野菜炒めが出来た。ふたりはまたテレビを見る。テレビ越しで会話をする。もちろんたまにはお互いの顔も見ているけれど。とにかくいつもテレビの話をしている。もう少し正確に言うと、テレビの中でのことを話している。『おっ、これイチローか?』『また美人なひとが出てきたねえ、モデルさんも大変だよ』と、コマーシャルにも話題はたえない。おじさんは火を使うものを終えるとすぐに煙草を片手にテレビに視線を戻す。おばさんはごはん、野菜炒め、漬物、味噌汁を出す。順番もいつもこう。そしておばさんの視線もまたテレビへ。『事件が起きるのかね』『どうなんだろうねえ』とおじさんとおばさんが話す。その後もなにかあれば、なにもなくても、その刑事ドラマのいちいちにお互いで質問、説明をしている。ちなみに、日曜日などのお昼どきにやっているお決まりの展開のドラマにもそうしているふたり。わたしはこの会話が結構気に入っている。と、言うと変かもしれないけれど嫌ではないのだ。お客さんを前にあーだこーだずうと話しているのを苦手に感じるひともいるだろう。けれど、このふたりはいつも楽しそうなんです。毎日見ているであろうお決まりの展開のドラマたちコマーシャルにも楽しそうにときには笑顔で話をしている。今日もそう。このふたりは夫婦なのだろうか。いつもこのカウンターの中にいるのにお互いのことで知らないこともあって『で、その宝くじはどこに売ってんの?』『あんた知っているかい?こんど〜がな。』といった具合。それに言葉の端々が妙に丁寧な、よそよそしいような。朝から晩までカウンターの中にいるのに。お店だけの付き合いなのだろうか。よくわからない。でも、これはいいです、わからなくて。で、そんなテレビとおじさんおばさん。さっきの客はもういない。わたしはこのふたりとひとつがとても幸せに見えた。ひとは暢気な老夫婦かと思うかもしれない。暢気、そうかもしれない。でも、そう思ってしまうのはあまりにも見る側が屈折していないだろうか、と思う。だってこのふたりはほんとにいつも楽しそうに同じことを繰り返しているもの。
外に出ると風が冷たい。ひとの幸せに気がついてしまったからだろうか。


今日もご来店ありがとうございました。

さようなら



うすだ